『勉強の哲学 来るべきバカのために 増補版』を読んだ

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前々から気になっていた本が「増補版」として文庫化されていたので購入。

面白かった、が、一読で済まされない感覚がある。

本書を読む前は(タイトルに”哲学”と入っているにもかかわらず)どこか勉強法的な、メソッドが書いてあるように誤解をしていた。

ところが実際は「勉強とはどういうことか」についてまるまる一冊書かれていた。 (一部「ノート術」や「書くための技術」「アウトライナー」なども書かれているが、一般にイメージされるようなノウハウの羅列ではない)

しかもその「勉強とは」が

  • ノリが悪くなること
  • キモくなること
  • バカになること

といった、およそ直感的にイメージする勉強あるいは勉強によって達成できる状態とは真逆の表現から始まっている。

本書の主張を本書以上に短く伝えることがおそらく出来ないので「読んでください」になってしまうものの、自分が理解した範囲で大まかな説明をすると・・・

まず我々はその場その場における環境の「こうするものだ」という暗黙の了解に合わせて=ノリを合わせて生きている。こうしたノリに無意識に合わせてしまっている状態から、勉強によって一定距離を置く、環境のノリに疑問を抱いたりすることができるようになる。

つまり、周りのノリから外れられるようになるわけだが、結果として周囲の人間からすると共有されているノリに合わせないやつ、「ノリが悪いやつ」であったり「キモいやつ」であったりになる。

本書のはじめの10%ぐらいでこれらの論が展開され、ここからアイロニーとユーモアをキーワードとして思考の広がりや深化、それらのアンチパターンと、終着点のない思考(こういう書き方はされていなかったけど)を回避するための仮固定などの話が続く。

正直「哲学」というものに全く触れずに生きてきたので、本書に出てくる様々な概念はどれも初めて出会うものばかりだった。

一方で、なぜかそれでも「言いたいことがわかる」気にさせられるように、話が展開される。難しい話をされているのだけでどもスッと入ってくるような不思議な感覚で読み進めることができた。(もっと疑ったほうがよかったかもしれない

本書を人に紹介して勧められる段階にまだ自分がいない感じがしてもどかしい。

Yoshiki Ito
Yoshiki Ito
山形出身 千葉在住の本業QAエンジニア
2022-04-13

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