『さみしい夜にはペンを持て』を読んだ。
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- 読書感想
この本は、2023年の発売前にTwitterで見かけて予約していて、少し積んだのち2023年の末ごろに読了した。
ちょうどモーニングページを始めたり、デジタルオンリーだったメモにアナログも取り入れたりと、自分の中で「書くこと」への関心が高まっている時期だった。
結果、2023年に読んだ本の中でベスト本だった。
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内容は物語スタイルで、主人公がタコジローというタコの中学生。
海の中にタコ含め海洋生物が暮らしていて、そこには学校があって、公園があって、バスが走っていて、という世界。
主人公のタコジローは軽く(本当は軽いも重いもないが)いじめのようなものを受けている状態だった。殴る蹴るではないけれど、ちょっとしたことでクラスメートにからかわれることが多く、そこに居心地の悪さを感じていた。
かつ、タコジローは自分のことが好きではなかった。からかわれるのはタコだからであり、タコである自分を好きになれないでいた。
そんななかである日ヤドカリのおじさんに出会い、そこで教わった“日記を書くこと”を通じて、自分と対話し、自分を癒やし、そして自分を好きになっていく・・・というお話。
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この本の書きっぷりからするに、基本はティーンネイジャー向けだと思う。主人公のタコジローが中学生で、学校での悩みを抱えつつもそれを家庭では相談できず・・・といった、中高生が自己投影しやすいように描かれていると思う。
ただ、これは大人が読んでも十分意味がある、むしろ中高生向けのフリをした大人=「あのころ中高生だった」層、に向けた本なんじゃないかと思わされた。
タコジローの抱える悩みは中高生のそれだけれども、その根本の部分は大人が持っている「うまくいかなさ」や「モヤモヤ」と実は同じかもしれない。そしてそうした悩みに対して、「書く」ことを通じて向き合っていく。
『考え』のともなわない文章はありえない
とヤドカリのおじさんは教えてくれる。
いまどき「考える」などしなくとも生きていけてしまうけれど、日記を通じて考えることによって救いが得られる。考えることはめんどうかもしれないけれど、生きる糧になる。という話が本書のストーリーを通じて語られている。
日記を書くことを通じて、考え、辛いときにも自分で自分を救いつつ生きていこう、というメッセージを感じた。
刺さる大人は多いと思う。