ITエンジニアの間で通じることばとして、「技術的負債」というものがある。
ITに限らず、「今は時間がないから、とりあえず動くものを作って、あとで落ち着いたらクオリティをあげよう」などの判断をしてとりあえず仕事を進めることはあると思う。
こうした判断をしたところで、けっきょく「あとで」「落ち着いたら」というタイミングはやってこないのが世の常なので、結局拙速な、質の低い成果物が積み重なっていく。その結果、いざ改善のために手をいれようと思ってもなかなか手が出せない状態になる。ちょうど膨れ上がった借金のように。
システム開発やプログラミングなどの文脈で上記のことが起こったときに、「技術的負債がたまっている」などと表現する。
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少し前に『メモの魔力』を再読して、ノートにメモすることを再開した。
この本にはいろいろと良いことが書いてあるけれども、キモになるのは
- ファクト
- 抽象化
- 転用
という3つのポイントを書くということ。
この思考段階を意識していると、いかにいままでの自分が「ファクト」あるいは「ファクト未満」のところで思考を止めていたかに気付かされる。
実際にこのメソッドにしたがって抽象化や転用まで考えてみると、脳の負荷がけっこうあるし、考えが出てこないこともある。一方で、思考が発散→収束して転用にあたる具体的なアクション案にたどり着けたときは、自分の考えだけれども自分の考えでないような、新たな出会いのような感覚を得ることもある。純粋に楽しい。
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いままでファクトやファクト未満で止まっていた、つまり抽象化や転用を考えていなかったことは、先の技術的負債に近い状態なのでは、とふと気がついた。
これを勝手に「思考的負債」と呼ぶことにした。
思考することをサボっていると、だんだんと思考の能力は幅など色々なものが失われていき、取り戻すのが大変になる。
というイメージ。
ほんとうの借金や技術的負債と同じで、おそらく思考的負債も一度にきれいにすることはできない。なので、少しずつ返済していく必要がある。
そのためのメモの魔力メソッド、タイトルではあえてノートテイキングと表現したけれども、「書く」ことと「考える」ことを小さく積み重ねていくしかないと思っている。